ネットの誹謗中傷やSNSでの悪口によるイジメで刑事上の責任、民事上の責任を問われる可能性

恋愛リアリティー番組テラスハウス(テラハ)出演者の木村花(きむらはな) さんの死去でネットの誹謗中傷、SNS上の悪口、イジメが問題となっています。

韓国の人気アイドルグループ「KARA」の元メンバーであるク・ハラさんもネットでの誹謗中傷に苦しめられ自ら命を絶つという事態になってしまいました。

ク・ハラさんは親日家で知られ、彼女のことを日本人で悪く言う人は少なく、お隣の国の出来事のため、どこかに対岸の火事的な感覚もありましたが、今回のテラスハウス(テラハ)の木村花さんの出来事は多くの人に問題を投げかけることになりました。

この件をきっかけにネットで日頃から誹謗中傷の被害を受けている芸能人やスポーツ選手などの著名人が今後は法的措置も辞さないことを示唆するケースも出てきています。

ネット上の誹謗中傷は芸能人に限らず、口コミサイトでのありもしない嘘での風評被害、学校での新しいイジメの形として社会問題にもなっています。

今回、木村花さんの死去によりネット上の誹謗中傷、SNS上のイジメに厳しい目が向けられる中で、過去に匿名ということもあり気軽な気持ちでネットに書き込んだ内容が「名誉毀損になるか?」「訴えられる可能性はあるのか?」といった不安を覚える人が急増しています。

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"誹謗中傷"と"言論の自由"の関係性

悪意を持って誰かを攻撃しようとする発言と、正当に評価してその内容が厳しい内容であった場合とでは状況が全く異なります。

飲食店の口コミサイトを例に挙げてみると「料理の中にゴキブリが入っていた」「料金をぼったくられた」など事実とは異なる"ありもしない嘘"を書き込んでお店の評価を落とすことはアウトです。

一方で、料理が美味しくない、お店のサービスが悪かったなどの評価は人によって感じ方が違います。

ここで厳しいことを書き込んだからといって訴えられるような事態になってしまったら、口コミサイトとしての意味・価値がないものとなってしまいます。

自分がお店を利用して感じたことを書き込むのは意見・感想を述べているのであって、お店にとって厳しい内容であったとしても法的な問題に発展する可能性は低いでしょう。

対象がお店でなく人の場合

上記は、飲食店などのお店に限らず、芸能人や一般の個人でもいえることです。

例えば「死ね」「消えろ」といった言葉には意見や感想が含まれてはいません。

「キモイ」や「ウザイ」といった言葉は、意見や感想なのかもしれませんが、相手を攻撃する意味合いが強く含まれていると判断される可能性が高く、相手が不快に感じたりプレッシャーになることは容易に想像ができます。

「チビ」「ハゲ」「デブ」といった悪口は、実際にその人がチビでハゲていてデブであっても、事実であれば何をいってもいいというわけではありません。

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誹謗中傷で科される刑事罰

ネット上の誹謗中傷、SNS上でのイジメ等により、書き込みの内容が相手な実生活になんらかの悪影響を生じさせてしまうと、以下の罪に問われる可能性があります。

書き込んだ内容が事実の書き込みであっても罪に問われる可能性があるため注意が必要です。

名誉棄損罪

名誉棄損罪(めいよきそんざい)は、公表した事実の真偽を問わず、「不倫をしている」「あいつは元犯罪者だ」など、公然の場で事実を公表して、その人の名誉を傷つける発言をした際に適用される刑罰です。

刑が確定すると加害者には、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金が科される可能性があります。

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

(引用:刑法第二百三十条)

侮辱罪

侮辱罪(ぶじょくざい)は、いわゆる悪口「チビ」「デブ」「ハゲ」などのように人を馬鹿にして辱める行為を公然の場で行った際に適用される刑罰です。

刑が確定すると加害者には、1日以上30日未満の勾留または1,000円以上1万円未満の科料(罰金)が科される可能性があります。

事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

(引用:刑法第二百三十一条)

但し、この程度の悪口で逮捕されてしまうと世の中逮捕される人ばかりになってしまいます。よほど悪質なものでなければ侮辱罪で逮捕されるケースは極めて低いです。

信用毀損罪

信用棄損罪(しんようきそんざい)は、「料理の中にゴキブリが入っていた」「料金をぼったくられた」といった、事実とは異なる嘘の情報を流して他者の信用を落とした際に適用される刑罰です。

刑が確定すると加害者には、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。

虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

(引用:刑法第二百三十三条)

損害賠償・慰謝料

民事上の損害賠償請求・慰謝料請求は、訴える側の請求が認められるかは分かりませんが、訴えを提訴することは可能です。

逆を言えば、どのような内容の書き込みであっても、訴えられてしまう可能性があるという事です。

損害賠償は実際に損害が発生していなければ認められることはありませんが、ネットに書き込んだ誹謗中傷による風評被害で損害を生じさせてしまったっ場合は生じた損害分を補償しなければいけません。

慰謝料はネットに書き込んだ誹謗中傷により、相手に精神的損害を与えてしまった場合に支払うもので、誹謗中傷により受けた精神的損害の度合い、内容(悪質性)、期間などにより金額が異なるため一概にはいえませんが、ネットの誹謗中傷で認められる慰謝料の金額は一般的に100万円以下といったところでしょうか。

誹謗中傷とならないケース

全てのケースで名誉棄損が問われるわけではありません。

下記に該当するケースでは相手にとって知られたくない事実を公表したとしても名誉棄損に問われることはありません。

公共性の高い事実の暴露

政治家の不正・汚職や企業の不祥事など、公共性が高いと判断されるケースでは、発信の目的が公的目的で、事実または真実であると判断するに相当な理由がある場合は名誉棄損に問われることはありません。

テレビや新聞、週刊誌が名誉棄損に問われないのは上記が理由になります。

ただし、芸能人の刑事罰の対象とはならない不倫などのスキャンダルを週刊誌が報じることは法的に考えれば名誉棄損に当たるケースも多々あります。

当事者間の口論での誹謗中傷

他にも、名誉棄損に問われないケースとして、誹謗中傷の刑罰は公然の場で他者を貶めた時に適用されるものであり、周囲から誰も見られることがない状況の口論で誹謗中傷をしても、公然性がなく罪に問われません。

ネットは現実空間ではありませんが、書き込んだ内容を誰でも自由に閲覧することが出来る状況にあるため、公然の場という扱いになります。

書き込みの特定は容易

ネット上の書き込みは匿名と思われているかもしれませんが、しっかりと記録は残っており、誰が書き込んだかを特定することは容易です。

サイトを運営する会社にただ単に開示を求めてもが個人情報の保護の問題があるため、簡単には開示してくれないだけであって、法的な問題となれば手順を踏んで情報の開示請求をすれば書き込んだ側のIPアドレス等の個人情報は開示されます。

ネットになにか書き込む際は、この点を十分理解する必要があり、厳しい内容の意見を書き込む際は、言い回しに注意して、本名を出しても同じことが言えるのかということを書き込む際の判断材料するようにしましょう。