キャバクラ・クラブなどの夜のお店、いわゆる水商売でよくある 遅刻・欠勤時の罰金制度は法的に問題が無いのか?

キャバクラ・クラブなどの夜のお店、いわゆる水商売でよくある「遅刻したら罰金」「欠勤(無断欠勤)したら罰金」 といったお店が定めた罰金制度。

時給契約であれば遅刻した分の時間に対して賃金が支払われないのは当然ですが、遅刻・欠勤したことに対しての罰則としてお金を請求されることは法律と照らし合わせて問題が無いのでしょうか?

スポンサーリンク

罰金制度の有効性は雇用形態により異なる

罰金制度が認められる、認められないはお店と交わした契約により異なります。

キャバクラやクラブで働く、いわゆる水商売の女の子(キャスト)の雇用形態には『雇用契約を直接結んで働く労働者』『業務委託で働く個人事業主』の2種類があります。

自分は求人情報誌を見て応募して普通に面接を受けているからアルバイトだと思っている女の子も、契約上は「雇用契約」ではなく、個人事業主として「業務委託契約」を結んで働いているケースがほとんどのため、契約内容が不明な方は確認をしてみてください。

雇用契約で働く女の子の場合

お店と雇用契約を結んで働いている女の子(キャスト)は、一般的な企業で働くOLさんやアルバイト同じで、労働基準法が適用されます。

労働基準法では第16条(賠償予定の禁止)に、『使用者は労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。これに違反した場合、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処す』と定められています。

これは従業員が遅刻や無断欠勤をしたり、課されたノルマを達成できなかった場合に罰金を取るといった趣旨の契約を結ぶとを禁止しており、これに違反した場合、使用者は逮捕、書類送検される可能性があるということです。

一方で、労働基準法第91条(制裁規定の制限)では、『労働者に対して減給の制裁を定める場合、減給は1回の金額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が賃金総額の10分の1を超えてはならない』と定めています。

一見するとこの「労働基準法第16条(賠償予定の禁止)」「第91条(制裁規定の制限)」では矛盾があるように思えますが、賠償額を予定する契約を禁止しているのであって、従業員に対して損害賠償請求すること自体を禁止しているわけではありません。

また、罰金を給料から天引きした場合は、労働基準法第24条(賃金の支払)に反する可能性があります。給料・アルバイト代から天引き労働者に対して全額を直接支払わなければならないと定められています。

業務委託契約で働く女の子の場合

先に解説した労働基準法は雇用契約を結んでいる労働者を守るための法律です。個人事業主として契約をしている場合は労働基準法第16条(賠償予定の禁止)の適用を受けません。

このため遅刻や無断欠勤の際の罰則規定を定めることは法律上問題はありません。

正確には、仕事を任されているのに遅刻や無断欠勤をしたことにより、お店に損害を生じさせた損害賠償という考え方が正しいかもしれません。

但し、損害賠償はあくまで、損害を与えた部分について支払うものであって、金額に合理性があるか否かの判断は個別の判断になります。

スポンサーリンク

水商売業界の雇用上の問題点

夜のお店いわゆる水商売は、女の子を直接雇用しないで業務委託という形で仕事を依頼するのには お店側の都合によるものです。

理由としては、女の子と雇用契約を交わして従業員にした場合、女の子に支払われる給料は消費税が課されない経費になるため税金の節約になります。また、従業員でなければ「厚生年金」「健康保険」「雇用保険」に加入させる義務も生じないため、お店側が負担する保険料の節約にもなります。

これらの理由により、お店側は女の子を直接雇用しないで業務委託契約にして仕事を依頼するという形にしたほうが、金銭的に有益だからです。

しかし、この水商売の世界では当たり前となっている業務委託契約ですが、事業者側が若い女の子の知識の無さに付け込んで、事実を知らせず、法律を自分たちの都合のいいように解釈して運用しているケースが多く存在します。

本来であれば業務委託契約は下記の要件に当てはまっていなければいけません。

  • 出勤日・出勤時間が決まっておらず、自由に出勤することができる
  • 給料は時給制ではなく、報酬として話し合いにより売り上げの何%分が支払われる

しかし、業未委託契約で働いている女の子も、出勤日・時間を決められ、お店からの指示・ルールに従い業務に従事しており、裁量が限られています。このような働き方は本来であれば労働者でなければなりません。

このため、お店と女の子との間でトラブルに発展するケースも珍しくありませんが、お店側は入店時に交わした契約書を盾に素直に聞き入れてはくれないでしょう。

しかし、法律に反する契約は無効です。下記の場合、女の子は労働者となります。

  • 給料が時給制
  • 出勤日・出勤時間が決まっている
  • お店の管理下にあり、指示を受け、ルールを強要されている

但し、業界全体で当たり前の働き方となっているため、個人が異議を唱えても相手にされない可能性があります。

お店が定める契約内情に納得がいかないというのであれば、裁判をするくらいの覚悟がで臨みましょう。