友人・知人に善意で貸したお金が返済されない時の法律に基づいた請求・催促・督促方法

友人・知人などに善意でお金を貸したが、返済が滞っていたり、返済の意思がないなど、借金の回収が困難な場合、弁護士などの専門家に頼むのが最も確実な方法ではありますが、小額の借金では弁護士費用を考えると、いわゆる費用倒れになってしまうケースも少なくありません。

いきなり弁護士に頼んだり裁判をするのではなく、個人でも簡単にできて、費用をかけず効果的な借金の請求方法・督促方法から、自分で手順に沿ってできる民事訴訟の流れについて解説します。

スポンサーリンク

借金の請求・催促・督促方法

世間では友人・知人のお金の貸し借りについて"お金を貸す方も悪い"や"あげる、返ってこないと思って貸す"などの意味不明なことをいっている人がいますが、借りたお金を貸せさない方が100%悪いのであって、このような考えの人は借りたら返さない予備軍といってもいいでしょう。

友人・知人という親しい間柄のため、やむを得ない事情により返済ができず、借主に誠意があれば、借金の請求方法、督促方法など調べていないはずなので、既に人間関係は破綻しているという前提で、穏便にではなく、確実に借金を回収することを一番の目的に請求・督促・回収方法を紹介します。

スポンサーリンク

内容証明郵便(ないようしょうめい)

『内容証明郵便』は、郵便局(日本郵便株式会社)が行うサービスで「文書の内容」「差出人」「宛先」「作成年月日」「郵送した事実」を公的に証明することができる郵便です。

内容証明郵便自体は、文書の内容が法的に正当であることを証明するものではなく、借金の回収に関する直接的な法的拘束力、強制力はありませんが、様々な効力があるため、一般的に法的手段に移行する前段階で利用されます。

文字数、行数など、書き方にルールはありますが、難しいことはなく、費用も1000円~2000円程度で済みます。

この段階で借金問題が解決できれば運が良かったくらいの気持ちで実行しましょう。

内容証明の役割

個人間の借金問題における内容証明郵便は、『債務者に心理的圧迫を加え、回収を実現しやすくする』という役割があります。

自分の固い意志を明確に示す、いわば"宣戦布告"のような意味合いがあります。

内容証明の法的効力

お金を貸した際に契約書を交わしていなかったり、契約書に返済の期日が指定されていない場合は、返済が滞っていたとしても債務不履行を主張することが出来ません。

しかし、内容証明郵便を送付することにより確定日付を取得することができます。

確定日付を取得すれば、債務不履行が主張できるため、遅延損害金を請求することができます。

また、個人間による貸付金債権は10年という時効期間が設けられており、この期間を超えると債権は消滅してしまいますが、内容証明郵便を郵送することで、時効期間を半年間延長することができるため、債権の効力を消滅させないために内容証明郵便が利用されることもあります。

受け取りを拒否された場合

内容証明の受け取りを拒否された場合でも、催告の事実が残るため、焦って何度も送付したりする必要はありません。

相手が受け取らないからといって職場や親族、保証人ではない第三者に対して内容証明を送りつけることは絶対にやめましょう。

借金は個人的なもなので、場合によっては名誉棄損などでこちらが不利な立場になってしまう可能性もあり得ます。

支払い督促(しはらいとくそく)

支払督促とは、未回収の債権回収を目的に、裁判所を介して債務者へ督促の通知をする手続きです。

手続きが簡単で費用も安く、裁判所を介して督促をすることで債務者に対して強い心理的圧迫を与えることができるため、一定の効果が期待できます。

しかし、支払督促は全ての債権者に適した手続きとは言い難い面があるため注意が必要です。

支払督促が対象とする債権は金銭債権のみで、利用できるのは相手の所在地を把握している場合に限られます。

特に急いではなく、返済に応じなければ徹底的にやってやるという人は、支払督促で借金の回収ができたらラッキーくらいの気持ちで試してみるのもいいかもしれません。

支払督促をお勧めする理由(メリット)

【手続きが簡単で短期間で完結する】

訴訟(裁判)と比較して手続きが簡単で、全く知識の無い個人であっても裁判所の案内に従って手続きをすることが出来ます。

手続きを開始してから約1ヶ月~2ヶ月という短期間で全てが完結します。

【申立費用が低額である】

請求額に応じて手数料は高額になりますが、最大でも6000円で、訴訟と比較すれば半額程度、弁護士に債権の回収を依頼する場合の10分の1以下の費用で済みます。

【強制執行の申立てが可能になる】

督促に対して債務者から異議申し立てがされなければ仮執行宣言付支払督促が付与されます。

仮執行宣言付支払督促が付与されると、裁判の判決と同様に債務者の財産を差し押さえるため、強制執行を申し立てることが可能となります。

【時効が中断される】

個人間による貸付金債権は10年という時効期間が設けられており、この期間を超えると債権は消滅してしまいますが、支払督促の申立により時効の中断ができます。

支払督促をお勧めできない理由(デメリット)

【支払督促は簡単に無効にできる】

支払督促を受けた人は、2週間以内に裁判所に「異議」を出すだけで簡単に支払督促を無効にすることができます。

異議を出すのに正当な理由は不要で、ただ単に「異議がある」と回答するだけで無効になります。

裁判所は、支払督促を送付する際に、異議の出し方の解説文を同封しているため、異議を出すことは容易で、異議を出されることは日常茶飯事です。

【異議を出されたら通常の裁判に移行する】

支払督促に異議を出され、支払督促が無効になると自動的に通常の裁判に移行します。

簡単な手続きで済ませたいから支払督促を選択したのに、裁判所に証拠を提出して、不足する費用を納め、場合によっては弁護士に依頼して裁判に臨まなければいけません。

手続きを怠れば裁判が却下されたり、請求が認められなくなってしまいます。

また、通常は裁判を起こす原告が居住する地域にある裁判所で裁判が行われますが、支払督促で異議が出されたケースでの裁判は、相手の居住する地域の裁判所で裁判が行われることになります。

このため、相手が遠方に住んでいれば、時間、交通費の負担が必要になってしまいます。

【時間、費用が無駄になる可能性がある】

支払督促が無効になれば、今までに要した時間、費用が無駄になってしまうどころか、自動的に通常の裁判に移行するため、最初から通常の裁判をしていたほうが結果として費用を低く抑えられ、解決も早かったということになります。

少額訴訟(しょうがくそしょう)

従来、訴訟には通常の裁判しかありませんでした。

通常の裁判は判決までに非常に長い時間がかかり、専門的な知識のない人には敷居が高く、弁護士に頼めば高額な費用が必要になってしまいます。

請求金額が少ない場合に、通常の裁判では割に合わないため、裁判を諦めていた人が多くいました。

「少額訴訟」は「訴訟」の一種ですが、通常の訴訟と比較すると手続が大幅に簡略化された個人でも容易に行うことができる訴訟制度です。

少額訴訟の特徴

【請求に金額に関する特徴】

少額訴訟は利用できるケースが限られており、金銭請求以外の争いには利用することはできず、請求できる金額も『60万円以下』に限られます。

60万円以内であれば、借金の請求(貸金返還請求)以外にも「給料の未払い請求」「敷金の返還請求」「売掛金請求」「損害賠償金の請求」などにも利用できますが、この60万円は、「元本」だけではなく、利息や遅延損害金、違約金、手数料など全てを含めた金額です。

【裁判にかかる時間の特徴】

少額訴訟は通常の裁判と比較して非常に短期間で判決が出ます。

裁判自体は、原則1回で審理が終わり、判決まで言い渡されます。

裁判での全ての手続きが1日で終わるということです。

申立てから裁判を経て全てが解決するまで1カ月程度といったところでしょうか。

一方で、通常の訴訟は非常に長い時間を要します。申し立てから判決まで3ケ月~1年以上かかることも珍しくはありません。

【判決に対する異議の特徴】

通常の訴訟(裁判)の場合は、一審の判決内容に納得がいかなければ、二審に控訴することができます。二審の判決にも納得がいかなければ、さらに上告することができます。

しかし、少額訴訟の場合は、判決に納得がいかなくても控訴することはできません。

できるのは『異議申立て』です。

異議申立てをすると、簡易裁判所で通常訴訟に移行します。

異議申し立て後に行われる訴訟では、控訴が認められないため、判決が出ると、その判決が確定します。

少額訴訟は一回限りの異議申し立てしかできないということです。

比較的小さな金額を取り扱い、速さを求める少額訴訟の特徴です。

少額訴訟が適したケース

大前提として、少額訴訟ができるのは、相手が少額訴訟での決着に同意している場合に限られます。

相手が少額訴訟での問題解決に同意しない、または話し合いに一切応じないような場合には、手続は通常訴訟に移行してしまい、少額訴訟の制度が利用できません。

  • 請求金額が少額(60万円以下)である
  • 早く借金問題を解決したい
  • 証拠(記録)が残っていて争いの内容がシンプル
  • 裁判官や司法委員が間に入ることで和解できる可能性がある
  • お互い弁護士を雇わない

訴訟(そしょう)

訴訟とは、当事者以外の第三者である裁判所が事件について強制的に紛争の解決や罰を与える判断を行う手続きのことをいいます。

世間の認識でいうとことの「訴訟=裁判」と考えて相違はありません。

民事訴訟、刑事訴訟、行政訴訟などに分類され、個人間のお金の貸し借りによるトラブルは民事訴訟によって争われることになります。

民事訴訟

民事訴訟は、個人間での紛争を解決する訴訟手続です。私人同士が当事者となり争いについて裁判所が判断を下すことになります。

個人間のお金の貸し借りによる争いの最終的な解決手段になるのが民事訴訟です。

請求金額が140万円以下の場合は基本的に簡易裁判所、それより大きな金額となると地方裁判所が管轄になり、相手の住所を管轄する裁判所で起こすことになります。

民事訴訟のメリット・デメリット

【民事訴訟のメリット】

訴訟は個人間の金銭トラブルにおける最終的な解決方法です。思い通りの結果になるとは限りませんが、金銭問題による争いを終わらせることができます。

相手が話し合いに応じなかったようなケースでも判決には法的な効力が生じるため無視することはできません。

はじめから被告が分が悪いと感していて、このまま裁判を続けても負けると分かっているケースでは、判決を待たずに和解に至るけーすもよくあります。実際に口頭弁論中に裁判所から和解(和解勧告)ができないかの提案がなされます。

【民事訴訟のデメリット】

民事訴訟は弁護士を立てることは義務ではなく「本人訴訟」といって、自分自身で訴訟を行うことも可能です。

しかし、民事訴訟は民事訴訟法という法律に基づいて進められ、主張や立証についても法律の裏付けがあって行われるため、紛争が複雑であればあるほど知識のない個人にとってはハードルが高いものになります。

明らかに被告に過失、落ち度があるようなケースでも思い通りになるとは限らないため、訴訟を有利に進めるには弁護士に依頼することは必需と考えていいでしょう。

しかし、弁護士に依頼すれば高額な弁護士費用がかかってしまいます。

請求金額が少額の場合は、弁護士に依頼するといわゆる費用倒れになってしまうケースがあり、請求金額が大きければ大きいほど弁護士費用も高額になるのが一般的です。

また、民事訴訟が敬遠される最も大きな理由が、裁判には時間がかかるということです。

訴状の提出から判決まで約半年~1年という非常に長い時間がかかります。控訴、上告すればさらに時間がかかってしまいます。

民事訴訟の進め方

【訴状の提出】

民事訴訟は、原告が裁判所に"訴状"を提出することで始まります。

訴状には、「原告と被告の氏名、住所」「請求の趣旨(原告に何を求めるのか)」「紛争の要点(請求の原因)」などを記載して、訴えの内容を証明できる証拠があれば合わせて提出します。

【法廷を開く日程を決める】

訴状が受理されたら裁判所と日程調整し、法廷を開く日を決めます。

訴状に不備がばければ、10日以内に裁判所から第1回口頭弁論期日を決めるための連絡があります。口頭弁論期日とは法廷を開く日のことで、通常で約1カ月~1カ月半程度先の日程が提示されます。

【訴訟の成立】

第1回口頭弁論の期日が決定したら、裁判所から被告に対して「訴状」「呼出状」「答弁書催告状」「証拠書類」などが送付されます。これらの書類が被告に届いた時点で訴訟が成立となります。

【答弁書の内容を精査する】

第1回口頭弁論期日までの間に、被告から裁判所を通じて「答弁書」が原告の元に届けられます。

答弁書とは、訴状に対する認否を記載した書面で、被告の主張が書かれています。

  • 請求の趣旨に対する答弁(認める・認めない)
  • 請求の原因に対する認否(認める・認めない)

答弁書の内容を精査して、相手が素直に支払に応じないようであれば、さらなる証拠、証人の準備を進めます。

【口頭弁論で自分の主張をする】

口頭弁論では裁判官に意見を主張するのですが、第1回の口頭弁論は被告の予定を聞かずに日程を決めるため、被告が欠席する可能性もあります。そのため、第1回の口頭弁論は、裁判官が『陳述は訴状通りで間違いがないか』を原告に確認して、次回の日程を決めるだけで終わるケースがよくあります。

口頭弁論は必要であれば何回でも行われます。2回目以降の口頭弁論では、期日前までに次回の口頭弁論での陳述する内容を記述した準備書面と呼ばれるものを提出する必要があります。新たな証拠書類があれば合わせて提出します。

【判決】

原告、被告お互いの主張や反論、当事者や証人に対する尋問、証拠品の精査などが終わり、裁判所が判決を出すのに十分な材料が揃ったと判断すると「弁論の終結」が宣言されます。

弁論の終結が宣言されると「判決言渡期日」が指定され、判決が言い渡されて訴訟は一旦締めくくりとなります。

【判決に納得がいかない】

判決が言い渡されて確定するのは2週間後です。一審の判決内容に納得がいかないようであれば、確定するまでの期間に二審に控訴することができます。

二審の判決にも納得がいかなければ、三審に上告することもできます。