新型コロナウィルス感染症拡大の抑止に成功 日本が感染者の死亡率が低い理由(BCG・遺伝的要因)

世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は4月25日、スイス・ジュネーブで開いた記者会見の中で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言を全面解除した日本について、新規感染者が大幅に減少し死者数増も抑えられているとして、感染拡大の抑止に『成功』したと評価しました。

当初は初期対応の遅れを指摘されたこともありましたが、日本は欧米並みの感染爆発には至っておらず、感染者の死亡率の低さも評価の理由となっています。

日本が感染拡大を抑えることに成功し、世界の国々と比較して死者数が際立って少ないのはどのような要因が考えられるでしょうか。

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日本の主な感染拡大の防止策

日本でのコロナウィルス感染拡大を防止するための大きな柱は下記の通りです。

  • 3密の回避(密集・密接・密閉)
  • クラスター対策(ライブなどの自粛)
  • 人との接触8割減(外出自粛・テレワークの活用)
  • 感染経路の調査による感染拡大の防止

しかし、一方でこれらの対策には下記のような指摘もあります。

  • 自粛要請には強制力がなく、有効な対策とは言い難い
  • PCR検査が海外よりも少なく、実際はもっと多くの人が感染している可能性がある
  • スピート感が無く全てが後手に回っている
  • 都道府県に丸投げで政府のリーダーシップが感じられない

日本のコロナ対策に対する海外の反応

日本の新型コロナウィルス感染症の拡大防止策に対して海外からは否定的な声が多く聞かれます。

しかし、実際に感染爆発に至っていない事実に対して下記のようにいわれています。

【アメリカ・フォーリン・ポリシー誌】
日本の対策は何から何まで間違っているように思える。しかし、不思議なことに全てがいい方向に向かっているように見える。
【オーストラリア ABC放送】
「公共交通機関の混雑状況」「高齢人口の多さ」「罰則のない緊急事態宣言」これらは大惨事を招くためのレシピだ。しかし、欧米に比べ被害が少ないことは「不可解な謎」だ。
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日本のコロナ感染者の死亡率が低い理由

当然、医療技術の発達、医療従事者の努力もありますが、欧米・欧州などの海外と比較して日本人の感染者に死者数が少ないのには特別な理由があるはずで、海外では『不可解な謎』としながらも、日本の死亡率の低さに注目しています。

日本の感染者の死者数が少ないという事に対して、専門家が複数の仮説を立て、検証・実験が開始されています。

  1. 高い衛生意識・生活習慣
  2. BCGワクチンが効果を発揮?
  3. 遺伝的要因・人種的傾向
  4. 肥満傾向が少ない

【仮説1】高い衛生意識・生活習慣

リゾート地以外の海外に行ったことがある人なら分かると思いますが、日本は他の国々と比較して非常に衛生的です。

当然すぎて無意識かもしれませんが、毎日風呂に入り、歯を磨き、洋服も着替え、自宅では靴を脱ぐなど、日本人は個人の衛生面にたいする意識も非常に高いといえます。

また、花粉症・女性はスッピンの時はマスクを付ける人が多いなど、日本では普段からマスクをする習慣があり、あいさつはおじぎですることが多く、海外のようにハグやキスなどの文化ではありません。

日本人の生活習慣も感染拡大防止に適しているといえます。

【仮説2】BCGワクチンが効果を発揮?

BCBワクチン(いわゆるハンコ注射)結核の予防接種で日本では70歳以下の人が子供の頃に接種しています。

BCGワクチンには結核に対する免疫だけではなく、体の防御システムの訓練作用があるため、他の病原体に対しても免疫が上がる可能性があるため、BCGワクチンが今回の新型コロナウィルスにも効果を発揮しているのではないかといわれており、新潟大学はBCGの技術を使った新型コロナウィルス用のワクチンを開発すると発表しています。

現時点でBCGワクチンの有効性が証明されたわけではありませんが、BCGワクチンを接種している国、していない国ではBGGワクチンの有効性を裏付けるような傾向が見られ、接種プログラムがあるアジア諸国では感染者数に対して死者数が少ない傾向にあり、接種プログラムがない(推奨していない)欧米諸国では重症化・死亡する人の割合が多いといわれています。

ヨーロッパなどでは、隣り合った国でも摂取プログラムの有無で傾向に大きな違いがあるといわれています。

但し、WHOの報告書では、BCGワクチンが新型コロナウィルスに効果があるか不明のため、接種の推奨はしないという立場です。

【仮説3】遺伝的要因・人種的傾向

京都大学・慶応義塾大学・東京医科歯科大学などの国内8研究機関が新型コロナウイルスに感染した人が重症化する"遺伝的な要因"などを調べる共同研究プロジェクトを立ち上げました。

人間の細胞にはタイプがあり、これを"HLA"と呼び、種類は数万タイプあるといわれています。

(HLAとは血液型でいうところの"型"のことです)

このHLAが一人一人違うというより、人種的傾向があり、これにより死亡率が低いのではないかといわれています。

「HLA」はウィルスに感染したとき、"免疫反応の司令塔"になる役割があり、「ウィルスに対する撃退の指令が「過剰なタイプ」「適度なタイプ」がある可能性があり、タイプにより症状の重さに違いが現れる可能性があると考えられています。

このHLAは多くの場合は遺伝で受け継がれており、日本やアジア諸国で新型コロナウィルスの死亡者が少ないのは、HLAタイプの人種的な違いが関係しているのではないかといわれています。

研究結果により、これらの仮説が証明された場合、重症化しやすいHLAの人は設備が整った病院、軽症化で済むHLAの人は自宅待機・ホテル療養などに分けることができ、第二発、第三発が起きた際に医療崩壊にならないための対策となります。

【仮説4】肥満傾向が少ない

フランスの専門家は、日本人に肥満傾向が少ないことが死者数に影響しているのではないかとの仮説を立てました。

肥満は糖尿病になりやすく、糖尿病はコロナの重症化の原因でもあるため、ある程度の関係があることは納得できます。但し、肥満傾向が少ないという事が死亡者数が少ない最も大きな要因ということではないと思います。

第二波、第三波に備える

日本は新型コロナウィルス感染拡大の抑止に成功したと評価されていますが、感染拡大を防止できた理由が分からなければ第二波、第三波がきたときに役立てることができず、無意味となってしまいます。

理由を知ることは第二波、第三波がきたときの感染防止策になり、万が一また緊急事態宣言が出たとしても、対策として有効なもの効果が低いものを分けることで経済に対する影響を最小限に留めることができます。

今現在、医療・感染症・経済の専門家が様々な仮説を立て、検証・実験が行われています。

日本が感染拡大を抑えることに成功したと評されたといっても、コロナウィルスは現在進行形の話であり、予防薬・治療薬の完成はまだ先のことになります。

個人個人ができることを実行し、第二波、第三波に備えるようにしましょう。