友人、知人などの個人間で行われる無利子・未担保、利益を求めない善意(好意)のお金の貸し借りでも貸金業法違反(違法)となってしまうケースがあります。
善意のお金の貸し借りが違法になってしまわないためにも、いったい個人間での融資・借金の際はに、どのようなことに注意しなければいけないのでしょうか?
貸金業
お金を貸し出す金融業者は、闇金融排除、貸金総量規制、金利の適正化などの借主保護の観点から、貸金業法により登録(貸金業法3条)が義務付けられています。
「貸金業」とは金銭の貸付けを、仕事・事業・職業など、「業として」行うものをいいます。
個人間の貸し付けであっても、無登録で行ったものが"業として"の貸し付けと判断されてしまうと10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金(貸金業法47条2)が科せられる可能性があります。
個人間の善意の貸し付けでも貸金業に該当する可能性
一般的に貸金業者はお金を貸し付けることで、利息として利益を得ていますが、貸金業法が定める業として行われるお金の貸し付けは"利益を得ようとする目的、利益を得た事実は必要ではない"とされています。
(最高裁昭和28年2月3日、最高裁昭和29年11月24日、最高裁昭和30年7月22日)
無利子無担保で利益を目的としない、友人・知人に対する善意の金銭の貸し付けであっても、1人に複数回、または複数人に1回、反復継続の意思をもって金銭の貸し出しを行っていれば、"業としての貸し付け"とみなされてしまう可能性があります。
人助けの融資でも違法
古い判決ですが、過去の最高裁判所の判決の中に、人助けのためにお金を貸しただけなのに無届出貸金業を営んだとして有罪判決を受けてしまった人もいます。
様々な事情があるため、一括りにすることはできませんが、金融庁は一般論として下記の見解を示しています。
金銭の貸付または貸借の媒介をを業として行う場合は貸金業に当たる。このうち業として行うというのは、『反復継続し、社会通念上事業の遂行とみることができる程度のもの』と解されている。
反復継続しているかはどうかは、実態に即して判断される。さらに、反復継続した行為が、社会通念上事業の遂行とみることができる程度のものかどうかについては、行為の主体に即して具体的に判断していくことになる。
金融庁の見解を解釈すると、個人間のお金の貸し借りが直ちに違法となる可能性は低いようです。
しかし、被害を訴える人、通報する人がいれば、過去の裁判の判例があるため、関係機関は対応せざるを得ない状況になります。
お金を借りておいて行き詰まったからといって被害を訴えるのは褒められた行為ではありませんが、人間は借金の返済を迫られると被害者意識が芽生えます。
お金は人間関係を変えるため注意がです。
個人間でも利息の請求が可能
金銭を貸し付け利息で利益を得ることが直ちに"業としての貸し付け"に該当するわけではありません。
業に該当しない友人・知人に対する金銭の貸し付けでは利息の請求も認められています。
利息を請求する場合は、金銭消費貸借契約を結ぶ際に、利息に関する取り決めを定め、契約書に記載する必要があります。
個人間での金銭貸借は無利息とされているため、事前に取り決めがなければ、借主は利息を支払う必要はありません。
利息制限法
利息制限法により利息の上限は金額に応じて下記のように定められています。
金銭消費貸借契約書は法律に基づいたものでなければ無効となるため、利息制限法で定められた上限以上で結ばれた契約を交わしたとしても、その分は無効となります。
金額 | 利息の上限 |
10万円未満 | 年20% |
10万円~100万円未満 | 年18% |
100万円以上 | 年15% |
また、個人間の金銭の貸し付けでも返済の期日が守られなかった場合は、遅延損害金の請求も可能です。
遅延損害金については、必ずしも金銭消費貸借契約書に記載しなければならないわけではありません。金銭消費貸借契約上、当然に発生するものと理解してください。
利息と違い、金銭消費貸借契約書に記載がなくても、借主は貸主から遅延損害金の請求を受けた場合には支払う必要があります。
契約書に記載する場合には利息制限法が規定する下記の利息を利率を設定することはできません。
金額 | 遅延損害金の上限利息 |
10万円未満 | 年29.2% |
10万円~100万円未満 | 年26.28% |
100万円以上 | 年21.9% |
出資法
利息制限法とは別に出資法という法律があり、出資法では個人間の金銭貸借の利息を年109,5%と定めています。
但し、利息制限法ではなく出資法の利息が有効とされるには条件があり、借主が任意で返済をした場合に限ります。
高い金利に思えますが、個人間のお金の貸し借りでは1万円を借りて次回の給料日に利息という認識ではなく、お礼として1割の1000円を加算して1.1万円を返すというケースがあります。
借主が納得して自らお礼の気持ちで支払ったお金まで違法としてしまうと不便が生じるため、出資法では年109,5%までの利息を有効としています。
但し、借金の申し込みは明らかに貸主側の立場が強く、借主が納得していないのに立場を利用して強制的に利息制限法を上回る利息で契約を交わした場合が無効となります。
109,5%以上の利息での金銭の貸し付けは出資法違反となり「5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金」という刑罰が科せられます。
年率109,5%は利息だけではなく、手数料など利息以外の名目で受け取った金銭も含まれるため注意が必要です。
『利息制限法』と『出資法』の違いと注意点については別ページにて詳しく解説しています。