働き方改革により水商売で働く女の子の給料、社会保障、仕事環境はどう変わるのでしょうか?

働き方改革法案は2018年6月29日に成立され、2019年4月より大企業を中心に順次施行されていますが、2020年4月から中小企業にも本格施行されます。

働き方改革により、キャバクラで働くキャバ嬢、クラブで働くホステスさんの働き方、職場での環境はどのように変わるのでしょうか?

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働き方改革関連法

働き方改革が水商売で働く女の子にどのような影響を与えるかの話をする前に、予備知識として働き方改革の概要を簡単に解説します。

日本の人口は2008年をピークに減少に転じています。人口が減れば労働力不足となります。労働力不足を解消させる為、働き手を増やし、出生率を上昇させ、労働生産性を向上させる必要があります。

日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「働く方々のニーズの多様化」などの課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性向上や、就業機会の拡大、意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが不可欠です。 これを実施させようとする政策が「働き方改革」です。

働き方改革は、『労働時間の短縮と労働条件の改善』『正規・非正規の不合理格差の解消』『多様な就業形態の普及』の3本柱で構成され、実現に向け下記の具体的な施策を講じています。

  • 非正規雇用の待遇差改善
  • 長時間労働の是正
  • 柔軟な働き方ができる環境づくり
  • ダイバーシティの推進
  • 賃金引き上げと労働生産性向上
  • 再就職支援と人材育成
  • ハラスメント防止対策
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労働時間の短縮と労働条件の改善

働き方改革の目的である「労働者にとっての働きやすさの実現」は、「労働時間の適正化」なくして達成できません。

今や、身を粉にして忙しく働くことは美徳ではありません。むしろ、従来の限度を超えた働き方こそが、労働者のメンタルヘルス不調や過労死の原因です。このたびの労働基準法改正により、これまでグレーゾーンとされてきた「 時間外労働 」にメスが入ることになりました。

正規・非正規の不合理格差の解消(同一労働同一賃金)

深刻化する人手不足を背景に、企業は今後、正社員に限らない多様な雇用形態に目を向け、より幅広い人材の活用を実現する必要があります。ところが現状、同じ仕事をしているにも関わらず、単に雇用形態の違いのみで待遇に格差が設けられるケースが多く、非正規という働き方へのマイナスイメージ、働く人の意欲低下を招いています。その格差を埋めるために考えられたのが「 同一労働同一賃金 」です。

働き方改革を通じて、雇用形態の別に関わらない公正な待遇が確保されることで、働く意欲のある人が主体的に働き方を選べるようになります。

多様な就業形態の普及

働く人が自分らしく、前向きに働き続けるためには、柔軟な働き方の実現が不可欠です。働きやすさが確保され、より多様な人材が活躍できるようになれば、企業の人手不足解消にもつながるでしょう。

柔軟な働き方の実現に向けた観点としては、出産や育児、介護等のライフステージに応じた働き方( テレワーク や 時短勤務 など )、労働者のキャリアアップや現場における労働力の供給に寄与する 副業・兼業 、今後さらにボリュームを増す シニア層の活用 が挙げられます。

水商売で働く女の子の働き方改革

水商売で働く女の子の多くは、お店と雇用契約を結んで働く従業員ではなく、個人事業主(フリーランス)として、お店とは業務委託契約を結んで働いています。

このため、労働基準法などの労働法規が適用されない水商売の女の子の働き方や環境に直ちに変化が現れるということは無いかもしれません。

しかし、政府は働き方改革の目的を実現するために「多様な就業形態の普及」で個人事業主という働き方を促進していく方針です。政府が促進するからには収入などの待遇面・社会保障の面での法的な整備を進める必要があり様々な施策が検討されています。

最低賃金など権利の保護

直接雇用契約を結ばない「個人事業主」には、労働基準法などの労働法規が適用されません。このため、仕事もらう側の個人事業主の立場はどうしても弱くなってしまいます。

情報や知識、交渉能力に格差がある状況での契約は低い報酬で契約を結ぶ原因になり、低報酬で仕事を請け負う人が増えれば業界全体の報酬の相場が下落してしまいます。

このような事態に陥らないために政府はフリーランスに支払われる報酬額に、業務ごとの最低基準額を設けることを検討しています。

しかし、水商売の女の子の賃金体系は、最低保証金と同じ意味合いの『時給』に売り上げに応じた出来高が加算されるなど、能力に応じて稼ぐことができる給料体系であり、既に給料(報酬)は高額な水準にあるため、この点はあまり関係がないかもしれません。

不利益になる契約の禁止

独占禁止法により立場を利用して個人事業主に不利益になる契約が禁止される見込みです。

課されたノルマを達成できない場合のペナルティや、お店を辞めて他店に移る際は顧客も手放さなければならない、同地域の同業種で働くことは禁止など、他にも明らかに合理性のない女の子にとって不利になる契約は禁止となります。

会社員と同等の保険制度

個人事業主は税金の申告・納税、保険、年金などの手続きは全て自分で行う必要があります。

水商売で働く女の子の場合、所得税に限り例外的に、お店が報酬から10%を天引きして、女の子のかわりにまとめて税務署に納めています。

しかし、お店は個人事業主である女の子を直接雇用する従業員が加入する『社会保険』『厚生年金』に加入させる義務がありません。

働き方改革では個人事業主も会社員と同等の社会補償を受けることができるように是正されていく予定です。

この問題を解決するには、水商売の業界全体で今まで曖昧・有耶無耶にされてきている『偽装請負問題』にメスを入れることになるといわれています。

水商売の業界に蔓延する偽装請負

政府はフリーランス(個人事業主)という働き方を促進していますが、水商売の業界においては、このフリーランスという働き方が逆に問題となっています。

水商売の女の子の多くはお店と雇用契約を結ぶこと無く、業務委託で個人事業主(フリーランス)という立場で働いています。

しかし、実際は様々な制約の下で働いているため、本来であれば、水商売で働く多くの女の子が個人事業主には該当しません。にもかかわらず、社会保障の面はフリーランスという理由でないがしろにされています。

事業主が直接雇用しない理由

事業主が女の子を直接雇用して従業員にするのではなく、個人事業主である女の子に業務委託で仕事を依頼するという形しているのには理由があります。

女の子と雇用契約を交わして従業員にした場合、女の子に支払われる給料は消費税が課されない経費になるため税金の節約になります。また、従業員でなければ「厚生年金」「健康保険」「雇用保険」に加入させる義務も生じないため、事業主側が負担する保険料の節約にもなります。

政府の偽装請負問題に対する対応

働き方からすれば雇用契約を結ばなくてはいけないのに、事業主が経費節減・節税のために法律を自分たちの都合のいいように解釈して、女の子を個人事業主として働かせている問題を『偽装請負』といいます。

水商売の女の子にとってメリットが少ない水商売の業界内における個人事業主への業務委託という働き方は今後見直しが行われる予定です。